ガス制御技術


流量制御システム


ガスを精密な流量制御には、主にMFC(マスフロー・コントローラー)が使用されます。MFCは国内外に多数のメーカーがあり、仕様や価格に応じてさまざまな選択肢があります。

 

MFCの流量制御範囲は、一般的に1:50が多く、まれに1:100の流量制御が可能なものもあります。したがって、より広い流量範囲を制御する場合は、流量レンジの違うMFCを複数並列に設置(多段制御)し、それらを組み合わせて使用することで幅広流量制御と精度とをバランスを取ります。

 

例えば、1~1,000NLM(1:1000)の流量制御をする場合、20L用と980L用を並列に設置すると、20L用で1~20NLM、980L用で19.6~980NLMまで制御ができるので、トータルとして、1~1,000NLMの流量制御が可能になります。ただ、20L用と980L用とでは、同じ20NLMを制御する場合でも精度が異なります。例えば、両MFCの精度が±1%F.Sの場合、20L用の誤差は20±0.2NLMになりますが、980L用の場合、20±9.8NLMになり、誤差は49倍になります。したがって、できるだけ誤差が少なくなるような流量範囲で制御できるようにMFCの流量レンジを選定する必要があります。また、より高い精度を追求する場合は、MFCそのものを高精度仕様のものに変えるか、3段、4段と更にMFCを増やし、精度を確保しなければならない場合もあります。

 

エノアでは、お客様のご要望に応じて最適な流量制御システムやガス混合装置を提案し、高い評価をいただいております。

加湿制御システム


ガスの加湿制御は、燃料電池評価や触媒評価において非常に重要な技術です。ガスの加湿方法にはさまざまな手法があります。

エノアでは、お客様の目的に応じた最適な加湿方法を提案し、低露点から高露点、小流量から大流量、低圧から高圧まで幅広く対応いたします。

仕様

バブラー方式で対応する場合、以下の仕様が目安です。

  • 露点

      一般仕様:雰囲気温度+10℃~95℃
      低温仕様:0 ~ 95℃
      高温仕様:雰囲気温度+10℃~150℃(加圧状態で成立)

  • ガス流量

      加湿器として供給できる流量範囲は、以下の通りです。
      最小流量:0.01NL/min
     最大流量:7,500NL/min

 

上記流量は、1台のシステムで0.01~7,500NL/minの露点制御が可能というわけではなく、一つの加湿ユニットで加湿制御可能なガス流量範囲の目安は、500~1,000倍程度です。加湿器はヒータ出力とのバランスもあるので、ご希望の流量にあわせて設計いたします。

加熱方法


バブラー 単純式 分流式
方 法

温度制御した水にDRYガスをバブリングさせて露点制御する。

バブラーを通って加湿されたガスにDRYガスを混ぜて露点制御を行う。

長 所 安定性が高く、制御因子が単純ので、比較的安価である。 バブラーの応答性向上と低露点(40℃以下)制御が可能。
短 所 露点の応答性が悪い。 単純バブラーに比べて、流量制御機器が倍になる、高コスト。

インジェクション スチーム式 ダイレクト式
方 法

スチームとガスの混合ガスを温度制御された熱交換器に通し、露点を制御する。

狙いの露点温度に必要な水を気化させて、それをDRYガスに混ぜて露点制御をする。

長 所 大流量用に適していて、応答性も良い。 応答性が速くて、シンプルな機器構成である。
短 所 システムが少し複雑になり、小流量には適さない。 水の気化量で露点を制御する為、小流量の場合、気化器に脈動が生じ易い、安定性が悪い。lまた、供給水量の誤差が露点に大きく影響するので、露点制度があまり良くない。
シャワー コンタクト式
方 法

温度制御されたシャワー状の水をDRYガスを接触させて露点を制御する。

長 所 少ない水量で加湿ができる為、応答性はバブラーよりも速い。
短 所 加湿器内の気層容積が大きいので、圧力制御の応答性は悪くなる。

露点応答性

バブラー方式における露点変更時のグラフの一例を以下の示します。
シンプルなバブラー方式ながら、高応答な露点制御を実現しています。

【上図】

・ガス流量:

Anode 1.2NL/min  

Cathode 3.9NL/min

・応答性:

10℃/5min以上

 

【下図】

・ガス流量:

Anode 12NL/min

Cathode 39NL/min

・応答性:

10℃/5min以上

 

背圧制御システム


エノアが採用する電空変換レギュレータは、CPUベースの閉ループコントローラと圧力センサとが内蔵されており、制御領域の全ての点で高精度な圧力制御が可能です。特にフルスパンの10%以下のレンジでも、リニアリティの低下はありません。寿命を左右する電流圧力変換部には摩擦や衝撃が発生しない完全フローティング型のフォースモータ(リニアモータ)が使用されており、長期間の作動後も性能の劣化はありません。分解能は0.05%以下であり、入力信号の変更のみにより1kPa以下の微妙な圧力調節も可能です。(最低設定圧力=0.1kPa、フルスパン=250kPa時)

 

高精度電空変換レギュレータと特殊演算ロジックにより、急激な流量変化、燃料電池の発電挙動に遅れることなくハイレスポンスかつ安定したは背圧制御を可能にしました。

 

背圧弁本体は、お客様の仕様(流量レンジ)に応じて、様々なメーカのものを選定いたします。
対応可能な流量範囲の目安として、0.001~7,500NL/minの範囲でレンジアビリティー1:1000程度まで対応可能です。また、加湿ガスやミストを含んだガスの背圧制御も可能です。

背圧応答性

高精度電空変換レギュレータにより、ハイレスポンス且つオーバーシュート、アンダーシュートの少ない背圧制御を可能にしました。以下は圧力変更時の背圧挙動の一例を示します。

トータルシステムの安定性

燃料電池の開発において電池の耐久性能を知ることは大変重要です。
弊社のFCTシリーズは条件安定性に優れています。下記データは長時間(18時間)
同一条件にて運転を行ったときの各試験条件の安定性を示しています。露点温度リップル
0.4℃、ガス温度リップル 0.2℃、背圧リップル 0.2KPaといった優れた安定性を誇ります。