真空断熱技術


真空断熱とは

真空断熱技術は、すでに私たちの身近な製品に使われています。その代表的な製品が魔法瓶です。昔は主にガラス製が一般的でしたが、最近では小型で丈夫な金属製のステンレスボトルが多く普及しています。

これらの製品は二重構造になっており、二重の壁の間を真空にすることで、高い保温・保冷効果を実現しています。

 

では、なぜ真空にすると熱の移動が抑えられるのでしょうか。 熱の移動には大きく分けて2種類あります。

  • 固体、液体、気体を介して移動する熱:伝導伝熱(対流伝熱も含む)
  • 電磁波によって移動する熱:輻射熱(光で伝わる熱)

 

魔法瓶は、二重の壁の間を真空にすることで、熱を伝える媒介である気体を排除し、熱伝導を防いでいます。しかし、真空によって防げるのは伝導伝熱のみで、輻射熱による熱の移動は残ります。この輻射熱を防ぐために、内容器の外側には銅や銀のメッキが施されていたり、銅箔やアルミ箔が巻かれたりしています。これら2つの技術により、高い保温・保冷効果が得られています。

 

低温真空断熱

実は、真空断熱技術は魔法瓶やステンレスボトル以外にも、工業的に古くから使用されています。 その代表例が、液化ガスを貯蔵・移送するための容器や配管です。

 

例えば、液体窒素は-196℃であり、大気との温度差は200℃以上になります。したがって、大気から熱が侵入すると、液体窒素がガス化してしまい、せっかく多大なエネルギーを使って液化したものが再びガスに戻ってしまいます。これを防ぐために、真空断熱技術が利用されています。

 

低温真空断熱は、魔法瓶の断熱技術と基本的には同じですが、二重の空間をより高真空に保ち、ガスによる伝導伝熱を防止します。また、輻射熱の移動を防ぐために、反射膜(アルミなどを蒸着した樹脂フィルム、例えばマイラー膜)を多層することで、より確実に輻射熱の移動を防いでいます。

 

高温真空断熱

従来、真空断熱技術は高温分野では使用されてきませんでした。低温は絶対温度の-273.15℃以下にはならず、大気との温度差は300℃程度です。一方、高温には限界がありません。では、なぜ真空断熱技術が高温分野で利用されてこなかったのでしょうか?その理由は以下の通りです。

 

  •  輻射熱の増大

輻射熱は温度の4乗に温度差に比例して増大するため、高温になればなるほど、輻射による熱移動が増加し、真空にしただけでは熱移動を防止できません。

 

  • 真空維持が出来ない

高温になればなるほど、材料の表面および内部から真空空間にガスが放出されてきます。その放出ガスにより、真空が維持できなくなり熱伝導が増大します。

 

  • 材料強度

真空断熱を構成する材料として、金属材料(主にステンレス)が使用されていますが、高温になればなるほど材料の強度が低下し、真空圧に耐えられなくなり潰れてしまいます。それを防止するために、材料の板厚を厚くすると、コストが高くなり実用的な価格で生産ができなくなります。
 

  • 熱膨張

激しい温度差による材料の膨張と収縮によって、断熱容器にクラックや孔が開き、真空が破壊されてしまいます。

 

これらの技術的な問題があり、また、それを克服するためには多大なコストがかかり、経済的に釣合う価格での製造ができないといった問題がありました。

 

エノアは、20年間の研究開発と実績から、これらの問題を解決し、高温でも長期的に安定して使用できる高温真空断熱技術を開発しました。


製品の種類と用途

□種類

真空断熱技術を使用した製品は、大別して、容器、配管、フレキシブルチューブ、フラットパネルなどがあります。

→真空断熱商品の種類と用途

 

□用途
真空断熱容器(VIV)
●燃料電池用改質器の断熱カバー ●過熱蒸気発生器 ●高温に曝されるセンサー等の保護断熱カバー ●固体酸化物形燃料電池(SOFC)の断熱カバー ●ゴム・樹脂等溶解装置・搬送部の断熱カバー ●触媒反応容器等の断熱カバー ●均熱化を目的とした断熱容器 ●装置等の保温保冷容器 ●LN2容器
 

真空断熱配管(VIP)
●クリーンルーム、無菌室内の断熱配管 ●サニタリー用断熱配管 ●過熱蒸気用配管 ●発電所、製鉄所、造船等の高温水、蒸気、高温排ガス配管 ●石油・化学プラントの蒸気、熱媒等輸送配管  ●建築設備用保温・保冷配管、凍結防止配管 ●装置等の保温・保冷配管 ●LN2配管 

 

真空断熱フレキシブルチューブ(VIFT)
●燃料電池システム内での保温・保冷用配管 ●連結防止配管 ●半導体製造装置、医療機器等への冷・温熱輸送配管 ●製造用、実験用装置内での保温・保冷用配管 ●LN2移送用フレキシブルチューブ